Image song 永遠に / ゴスペラーズ
「明日は仕事を早く切り上げるから、久しぶりに街で食事しない?」
このところ仕事に追われ、いつも疲れて帰って来る僕ばかりを見ている妻は、突然の言葉に少し驚きながらも、
「たまには奥さん孝行してもらわないとね。」と、優しく微笑んだ。
今朝の天気予報の通り、今年一番の寒さ。昨日とはまるで違う冷たい風に身を縮める。
「もう、早く終わるって言ったのに。」と睨む妻は、街のイルミネーションに照らされ、青白く悪戯っぽく微笑んでいる。
こうして心を少し休めて、ゆったりと夜をすごすのもいつのまにか忘れていたかもしれない。
イタリアンレストランで食事をし、白ワインを二人で空けた。軽い酔いにまかせてねだる妻に負けて、今日のカシミアの黒いコートに合うマフラーも奮発した。
何か大切なものに気づいた、プラスティックのような夜…
駅から家までの帰途。夜が更けるにつれ、いつしか風はやみ、静かで厳かな闇に包まれていた。
ふと、妻が立ち止まり、「綺麗….」とつぶやく。
見上げると、夜空には満点の星。ひときわ南天にきらめく、オリオンの美しさに心が揺れた。
「寒いね。。」と僕はつぶやく。 動いているのは、白くなった二人の息だけ。
そっと妻の手を握った。
「あったかい。」妻が手を握り返したとき、闇の中で一点だけ、ぬくもりが淡く灯ったような気がした。
何も言わず、二人で黙って、うるんだように光る星空を眺めた。
僕の頭の中には、あの大好きな曲の甘い歌声がかすかに流れていた。
冬が、、 始まる。